こんにちは!
行政書士事務所ビザハブの羽野です。
今回は、外国人の方が日本で会社を経営・管理する際に必要な在留資格「経営・管理」について、要件から申請の流れ、注意点まで丁寧に解説します。
「500万円の出資が必要って聞いたけど、自己資金じゃなきゃだめ?」
「自宅をオフィスに使えるの?」
「すでに設立した会社でも申請できるの?」
などなど、お悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、経営・管理ビザの要件、審査のポイントをしっかりと理解できるはずです。

この記事は以下のような人におすすめ!
・経営・管理ビザの要件を具体的に知りたい
・会社の設立、事務所の契約、許認可の申請など、申請までの手順を把握したい
・企業支援を行っている企業・団体様
経営管理ビザは学歴要件などもなく、他の在留資格と比べても要件がそれほど多くない反面、不許可率もかなり高い在留資格になります。
単に必要書類を揃えるだけでなく、事業の可能性や継続性を客観的に証明するために様々な書類を用意する必要があります。
そこで、外国人に関連する申請を専門としてきた行政書士の立場から、経営管理ビザについての要件・流れを説明します。
経営管理ビザとは
入管法別表第一の二には、経営管理の在留資格について下記のように記載されています。
「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」
要は、「経営管理」とは日本国内で経営者として事業をしたり、責任者として事業の管理業務をしていくための在留資格になります。
経営と管理、2つの分類がありますが、
経営とは、主に代表取締役などとして事業を指揮していく場合であり、
管理とは、主に部長や支店長といった責任ある立場で事業を運営管理する場合に該当します。
区分 | 内容 |
経営 | 代表取締役などとして事業を指揮 |
管理 | 部長や支店長などとして組織の管理業務に従事 |
会社については、
・新しく事業を展開する場合(新しく法人を設立する場合)
・既に営まれている事業(既に設立されている法人)に後から参加して事業をする場合
・既に事業を営んでいるものから、その事業を引き継ぐ場合
上記のいずれでも問題ありません。
事業の運営主体は、営利を目的とする法人(株式会社や合同会社など)に限らず、一般社団法人などでも問題ございませんし、個人事業主などでも可能です。



単に名ばかり経営者ではなく、実質的に経営に関与していること、事業の継続性が見込めることも併せて審査されます!
経営管理の要件
要件については、下記の事項を抑えておく必要があります。
経営者としてビザを取得する
①事業を営むための事業所が確保されていること
②事業の規模が次のいずれかに該当していること
イ:日本に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く)が従事していること
ロ:資本金又は出資金の総額が500万円以上であること
ハ:イ又はロに準ずる規模と認められるものであること
管理者としてビザを取得する
③事業の経営又は管理について三年以上の経験を有すること
④日本人が従事する場合と同等以上の報酬をうけること
ひとつずつ解説していきます。
①事業を営むための事業所が確保されていること
これは単にどこでもいいので事業所が設置されていればよいということでは足りず、独立したスペースが確保されている必要があります。つまりバーチャルオフィスやワーキングスペースなどでは許可が下りないということです。
自宅兼事務所の場合はどうなのか、という質問も多々ありましたが、可能か不可能かでいうと可能になります。ただこの場合の独立したスペースとは、単に居住スペースと事務所スペースを分けているというだけでは足りず、事務所に入るまでに居住スペースを通らずに行ける設計にしておく必要があります。つまり事務所の入り口と住居の入り口を別々に設置しておく必要があります。
②事業規模について
こちらは二人以上の常勤の職員が従事しているか又は資本金、出資金の総額が500万円以上ある必要があります。
気を付けておきたいポイントとして常勤の職員の対象には、法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者は含まれません。つまり、就労系の在留資格(例えば技人国や特定技能)などはこの対象にならず、身分系の在留資格(永住者や日本人の配偶者)をもつ者か日本人が対象となります。
出資金の500万円については、現に資本金が500万円あるということだけでは実は入管は認めてくれません。その500万円をどのように捻出したのか、500万円を捻出するだけの資力があるのかというところまで証明する必要があります。
この背景としては、入管に申請をするためだけに見せ金として500万円をもってきて申請が通れば、口座から500万円がすっぽりなくなっているというケースが散見されるためです。
つまり、例えば借り入れで用意するのであれば借用書の提出も必要ですし、自己資金で用意するのであれば、過去の口座の入金履歴(貯金が増えていく過程)や収入証明書なども提出する必要があります。
③実務経験について
次に管理者としてビザを取得するための三年以上の実務経験についてですが、会社での実務経験だけではなく大学院等で経営又は管理に係る科目を専攻した期間も含むことができます。
④日本人と同等以上の給料を受けることについて
こちらの要件は今回の「経営・管理」の申請に限った話ではありません。
能力の差によって給料に差を設けることは、理にかなっていますが、単に外国人だからという理由だけで日本人との差を設けることは当然認められません。
申請までの流れ
ここでは実際に会社を設立して且つ経営管理ビザも取得する場合の具体的な流れについて解説します。単に入管でビザの申請をするだけでなく、法務局で登記をしたり、事務所の賃貸を開始したり、税務関係の届出をしたり、とてもやることが多いため順序をしっかりと把握した上で実行することが必要です。
ビザ申請や会社設立に先立ち、事業の内容や市場性、資金計画、予定地などについてヒアリングを行います。特に、どのような業種で、どの地域で、どのような形態の事業を展開するのかは、ビザ取得に大きく影響するため、綿密な計画立案が必要です。
日本に住んでいない方(非居住者)且つ共同代表者がいない場合は原則来日いただいたほうが効率がよいです。
株式会社や合同会社など形態を選び、定款を作成・認証し、登記を行うことで法人格が取得できます。この段階で会社名、所在地、事業目的などが正式に決定します。法人口座の開設は在留資格申請の許可後でも問題ないです。
会社設立と事務所の賃貸開始は順序が入れ替わることもありますが、申請時には法人名義で借りておく必要があります。また、申請中は事務所の空家賃が発生します。申請期間が半年ほどなど長くなるケースもありますので資金はある程度余裕をもって確保しておくことをお勧めします。
後の追加書類として現金出納簿や領収書等の追加書類を求められることもあるので、できればこの時期から税理士との顧問契約などを開始して書類の管理に努めることをお勧めします。
実際に営業を開始できるように、必要な備品や環境を整えます。看板の設置やデスク・椅子・パソコン・インターネットなどのインフラも含まれ、入管審査でも「営業実体」を示す重要な要素になります。店舗がある場合は、許可取得後に営業を開始できるように仕入れなどの店舗内の準備も進める必要があります。
業種によっては、事業を行うために追加の許認可が必要となります。たとえば、不動産業であれば宅建業免許、人材紹介業であれば職業紹介事業の許可が必要です。
「経営・管理」の在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を出入国在留管理局に提出します。申請には事業計画書や資金資料など多くの証明書類が必要です。
短期滞在中に申請した場合、原則として申請後は一度帰国し、母国で審査結果を待つことになります。
入管からの許可の取得ができれば、次のステップに進みます。もし不許可の場合は、不許可理由を把握して、改善できる内容であれば、改善次第再申請を行います。
在外日本大使館・領事館において、許可された認定証明書を元に査証(ビザ)を申請・取得します。査証を取得した後、再び日本に入国します。
すべての準備が整ったら、いよいよ事業を正式にスタートします。営業開始後も、売上実績や従業員雇用など、事業の実体を維持することが、在留期間の更新にもつながります。
労働基準監督署、年金事務所、ハローワークなどへ、労働保険・社会保険の加入手続きなどを行います。
抑えておきたい重要ポイント(審査上の留意事項)
① 事務所の利用目的について
経営・管理ビザの審査においては、「実態のある事業活動を行っていること」が非常に重要です。
そのため、事務所の賃貸借契約書に記載された使用目的が「事業用」「店舗用」「事務所用」など、明確に業務利用であることが求められます。
たとえば、居住用物件や契約書上の使用目的が「住居専用」となっている場合、事業用としての使用実態が認められず、ビザ申請が不許可となる可能性が高いです。。
✅ ポイント:契約書の「使用目的欄」を必ず確認し、不明確な場合は貸主に修正してもらいましょう。
② 事業の継続性について
主に更新申請の際に問題となるケースが多いです。経営・管理ビザは、許可取得後に売り上げをしっかりと作っていくことが大切になります。
債務超過に陥っており、さらにその状態が1年以上改善されない場合は、原則として事業の継続性があるとは認められず、更新ができなくなるケースが多いです。
ただし、事業モデル上、事業開始後数年間は赤字を見込んでいる場合など、債務超過に合理的な理由があり、かつ今後の改善見込みが明確に示されていれば、更新が認められるケースもあります。
✅ ポイント:事業開始後も、定期的に売上や収支を把握・改善し、会計記録を整備しておきましょう。
③ 事業計画書の作成について
「事業計画書」は、経営・管理ビザ申請の中でも最重要書類の一つです。
単に形式的な書類ではなく、「この事業に将来性がある」「継続的に経営していける」ということを客観的に示す資料である必要があります。
▼ 事業計画書に記載すべき主な項目
- 事業の概要(何を提供するか/ターゲット顧客など)
- 市場調査・競合分析(業界動向や需要)
- 売上・利益予測(資金繰り計画)
- 具体的なスケジュール表(いつ・何をするか)
- 人員計画・雇用予定
- リスクとその対策
また、単なる数字の羅列ではなく、ビザ審査官が内容を理解しやすい構成・説明が求められます。
翻訳が必要な場合もあるため、外国語話者にとってもわかりやすい表現が望ましいです。
✅ ポイント:実際の事業内容に基づいた、現実的かつ説得力のある計画を立てましょう。
まとめ
経営・管理ビザ取得のカギは“実態”と“準備”です。
経営・管理ビザは、日本で会社を経営・管理するための重要な在留資格です。要件そのものは一見すると明確である一方、実際の審査では「形式ではなく実態があるか」が厳しくチェックされます。
たとえば、独立性のある事務所の確保や、出資金の資金源の証明、適切な事業計画の作成など、準備段階から非常に多くの書類や対応が必要になります。
また、許可が下りた後もゴールではなく、継続的な売上や適切な雇用管理、税務処理などを通じて「事業の継続性」を示し続ける必要があります。更新や将来の永住申請を視野に入れる場合、日々の経営の積み重ねが何よりも重要となります。
「準備が甘かった」「書類の整合性が取れていなかった」という理由で不許可になるケースも少なくありません。だからこそ、初回申請の段階から専門家のサポートを受けることが、許可率アップへの近道になります。
ビザのご相談はお気軽に!
行政書士事務所ビザハブは外国人に関わる申請を専門とした行政書士事務所です。
今回説明した「経営・管理」についてももちろんサポートしております。
経営管理ビザは申請をする上でかなり広範な証明書類が必要になってきます。
ご自身だけでの判断が不安な方は、ぜひ一度プロによるサポートをご検討ください。


行政書士 羽野悌慈
行政書士事務所ビザハブの代表行政書士
日本の企業が深刻な人手不足に直面していることを痛感し、大学卒業後に社内起業で外国人材事業を立ち上げる。
外国籍の方々にとって必要な在留資格(ビザ)は、個々の事情に応じて申請の難易度が高いケースが多く、この問題を自らの知識と経験で解決したいと考え、行政書士事務所を開業する。