帰化申請の要件が厳格化へ?住所要件「5年→原則10年」検討の影響と、今できる準備

2026年1月23日、政府は外国人政策の方針案として「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を公表しました。
その中で注目を集めているのが、帰化申請(日本国籍取得)に関する審査の厳格化です。
とくに大きいのは、「帰化の住所要件(現行:原則5年)」を、永住許可(原則10年)との整合性の観点から“原則10年以上在留”を求める方向で検討するという点です。
この記事では、政府方針の内容を整理しつつ、「いつから変わるのか?」「今申請するべきか?」を実務目線で解説します。
何が変わる?最大のポイントは「住所要件の見直し(5年→原則10年)」
政府資料では、現状の問題点として
- 永住許可の本邦在留要件は原則10年以上
- 帰化の住所要件が5年以上
この“差”は不整合ではないか、という指摘があると明記されています。
さらに、「速やかに実施する施策」として、「日本社会に融和していること」要件の審査において、原則として10年以上在留していることが必要とする方向など、帰化の厳格化のための審査の在り方を検討するとされています。
現行ルールのおさらい:帰化(普通帰化)の主な要件
住所要件(居住要件)
- 引き続き5年以上、日本に住所を有すること(原則)
ここが今回「原則10年」方向で見直し検討とされたポイントです。
※「引き続き」とは、途中で期間が途切れていないという意味になります。例えば100日(約3か月)以上の出国がある場合、年間の合計出国日数が150日以上である場合は、引き続き日本に住んでいると判断されない可能性が高いです。長期出国があると不利になり得るため、出入国記録や生活実態が見られます。
能力要件(年齢・行為能力)
- 18歳以上で、かつ 本国法上も行為能力があること
成年年齢引下げにより、要件が「20歳→18歳」に整理されています。
ただし、親が帰化するタイミングで、子どもも一緒に申請するケースでは、未成年であっても帰化が認めらます。
素行要件(素行が善良)
- 素行が善良であること
典型的には、犯罪歴だけでなく、状況によっては 交通違反の頻度・態様、勤務状況なども含めて総合判断されます(“一発アウト”というより、内容と積み重なりが見られます)。
生計要件(安定した生活)
- 自己または同一生計の配偶者・親族の資産や技能で、生計を営めること
つまり、「継続的に生活できるだけの収入・安定性」が求められます。
ここでネット上などでよく見かけるのが、「年収300万円が基準」という話です。
ただしこれは、法律に“年収300万円以上”と明記されているわけではありません。あくまで、各地の法務局での審査実務の中で「このあたりが一つの目安になりやすい」とされている水準です。
つまり、単純に「年収が300万円に届かない=不可」ではなく、反対に「年収300万円ある=必ず許可」でもありません。
世帯の人数、配偶者の収入の有無、居住地域(家賃・生活費=物価の差)、雇用形態・継続性などを見て総合的に判断されます。
重国籍防止(国籍喪失要件)
- 国籍を有しないこと、または日本国籍取得により現国籍を失うべきこと
日本は原則として重国籍を認めない運用のため、ここが要件として置かれています。
憲法遵守・反社会要件
- 日本国憲法や政府を暴力で破壊することを企て/主張する団体を結成・加入していないこと
いわゆる「思想条項」「反社会条項」と呼ばれる部分です。
日本語能力(法律に明文はないが、実務でほぼ必須とされること)
国籍法5条そのものには「日本語要件」の文言はありませんが、実務上では日常生活に支障のない程度の日本語能力が必要と案内されています。具体的には、小学校2,3年生のレベルの漢字が書けるのであれば問題ないかと思います。
参考:要件が緩和される「簡易帰化」もある
「簡易帰化」は、国籍法上、日本との結びつきが強い人について、普通帰化(国籍法5条)よりも一部の要件が緩和される類型です(主に国籍法6条・7条・8条)。
代表例としては日本人の配偶者、以前日本国籍だった人、日本人の子などです。
詳細の内容は、また別の記事で解説します。
世界の一般的な傾向と、日本が“例外”と言われてきた理由
一般に多くの国では、永住権よりも帰化(国籍取得)のほうが要件が重い傾向があります。
国籍取得は「その国の構成員になる」ため、在留資格の中でも最も影響が大きいからです。
ところが日本は、制度の見え方として 「永住(原則10年)より帰化(原則5年)のほうが早く到達できる」 という構造があり、そこが“例外”だと語られてきました。
なぜこのような運用になっているか、その背景としては
永住資格にかかわる制度と国籍制度の間で十分に調整が行われてこなかったという点や、「国籍を獲得しないままに永住をする」というあり方を想定の外に置いてきたなど、所説あります。
今回の方針は、まさにこの点を整合させていく方向性といえます。
いつから変わる?──現時点では「施行時期は未定」
今回の資料は、あくまで外国人政策の方針を示したものなので、いつから運用が始まるかまでは書かれていません。
帰化実務は全国の法務局(国籍課等)が受付・相談窓口になりますが、具体的に運用が始まったとしても、既に準備している申請者(例:施行日前に相談予約済み/書類準備が相当進んでいる等)への配慮として経過措置が取られる可能性は十分あります。
まとめ
帰化申請は、住所要件が将来的に「原則10年」へ見直される方向で検討が進んでおります。
そのため、これから帰化を考える方は、
①長期出国や在留資格の空白を避けて在留の連続性を保つこと
②収入や納税状況などを含め安定した生計を説明できる状態を整えること
③就労・納税・家族状況・生活実態を通じて「日本社会への融和」を客観的に示せるよう準備することが今まで以上に重要です。
今回の方針では、住所要件の厳格化が示された一方で、施行時期はまだ未定です。ただし方針として明文化された以上、制度設計や運用は今後動く可能性が高く、継続的な情報確認が欠かせません。「あと少しで5年」「すでに5年を超えて準備中」という方は、今後の変更内容によって判断が分かれる可能性があるため、早めに状況整理と申請戦略の検討を進めておくことが安全です。

行政書士 羽野悌慈
行政書士事務所ビザハブの代表行政書士
日本の企業が深刻な人手不足に直面していることを痛感し、大学卒業後に社内起業で外国人材事業を立ち上げる。
外国籍の方々にとって必要な在留資格(ビザ)は、個々の事情に応じて申請の難易度が高いケースが多く、この問題を自らの知識と経験で解決したいと考え、行政書士事務所を開業する。
